トレーニングコーチのオフシーズン
2016.03.02 Wednesday
今回のコラムは読売巨人軍トレーニングコーチの伊藤 博氏より頂きました。
ご投稿いただいてからコラムにアップするのが遅くなってしまい申し訳ありません(事務局)
プロ野球はタイトなスケジュールです。
2月1日のキャンプインに始まり、オープン戦・ペナントレース・CSに日本シリーズ、そして11月末の秋季キャンプ終了まで、我々コンディショニング部門はほぼ休み無しを覚悟してやっています。もちろん、キャンプ休養日や、シーズン中も週に一度試合のない日に休める時はあります。しかし、たいていは先発投手の調整練習や移動等に費やされます。これは一・二・三軍問わず、どの球団も似たようなものかと思いますが、いかがでしょうか?
では、12月・1月のオフシーズンをどう過ごしているか?
我々トレーニングコーチは1月上旬からの「新人合同自主トレ」で陣頭指揮を執ります。そうなると実質的なオフは12月のみ。しかし、この12月も二軍・三軍担当はアスリハや育成練習を担当する場合も有ります。となると自由に動けるのはほんのわずかの時期。この時期をどう過ごすかは非常に重要だと私は思っています。ゆっくり休んで英気を養い、家族サービスやゴルフ…もちろん、そういう時間も大切です。でもそれだけでは「井の中の蛙」の出来上がり、ですね。普段タイトスケジュールなだけに、フリーに動けるこの時期に情報収集の努力を怠るようではコーチとしての進歩はありません。
今回は、一例として私のオフシーズン(2015年12月)を紹介してみます。
●MLBウィンターミーティング(テネシー州ナッシュビル)
12月上旬はMLBウィンターミーティング期間に開催される「MLB S&C COACHES SOCIETY」に参加しました。これはMLB全球団のストレングスコーチが一堂に会しての勉強会。日本の「プロ野球S&C研究会」との交換交流が始まって3年目です。発表者の楽天・星コーチに加え、オリックス・住田ディレクター、巨人軍からは内藤と私が参加しました。
到着日のレセプションパーティーの後、2日間に渡る会議では各球団から様々な発表があります。STRENGTH、RECOVERY、INJURY etc.・・・。MLBから学ぶべき事柄は少なくないなぁと再認識しました。それを日本のやり方と融合させてどう活かしていくべきか・・・ですね。
参加メンバー 発表中の楽天・星S&C
●アメリカのプロスポーツ視察(テキサス州ダラス)
ウィンターミーティング終了後、ナッシュビルからダラスに移動。
マイケルジョンソン・パフォーマンスセンター、テキサス・レンジャーズ、ダラス・スターズ(NHLアイスホッケー)を視察。それぞれのS&C担当が視察に快く応じて下さいました。
中でもマイケル・ジョンソン・パフォーマンスセンターは、トレーニング棟に加え、野球場2面・ホッケー場
2面、サッカー場16面(!)を有する広大な施設。恐るべしUSA!
マイケル・ジョンソン・パフォーマンスセンター
あのエディ・マーフィーに似た200m・400m陸上五輪金メダリストプロデュースの施設
テキサス・レンジャーズ
ダラス・スターズ
試合会場ではありません、あくまでもチームの練習施設。規模が違う!
●龍谷大学(京都)
龍谷大学長谷川先生は、JATIでご存じの方も多いと思います。スポーツサイエンスというカテゴリーで、現場で役立つメソッドを数多く提案し実践している事から、毎年研究室を訪問し続けて何年になるのやら・・・。
私にとってオフの欠かせない「ルーティンワーク」になっています。長谷川ゼミでの臨時講義も私にとっては良い勉強。同大学青木S&Cコーチの指導も拝見させて頂きました。
京都訪問、となれば夜は祇園・・・ですね。これもルーティン(笑)
龍谷大学 ウェイトルームの熱気は凄かった!
京都、夜のルーティン
●リズムトレーニング(岡山)
12月2日のプロ野球S&C研究会で美作大学の津田先生がリズムトレーニングについて発表しました。これにいち早く食いついたのは多分私でしょう(笑)。詳しい理由は割愛しますが、これは我がチームにとって有益な手段と成り得る、とにかく教わろうと岡山に飛び、スタジオをお借りして津田先生と関元トレーナーから特訓(^^)。翌日はリズムジャンプを取り入れている美作大学内のHIPHOP教室を視察させて頂きました。小学生のまぁ上手いこと!プロ野球選手は果たしてどうなんでしょうね。乞うご期待!
美作大学 HIPHOP教室のリズムジャンプ
●王子イーグルス(苫小牧)
かねてから親交のある王子イーグルス小柳S&Cコーチを訪ね、苫小牧へ。
試合日には何度か伺っていますが、練習日は初めて。ここで小柳コーチが実践している「TWIST METHOD」を学ぶのが今回の主たる目的です。氷上練習後のDRYトレーニング(陸上でのトレーニングをこう呼ぶそうです)を視察し、アイスホッケー選手のフィジカルの高さを再認識しました。氷上の格闘技と呼ばれる所以でしょうか。それに、体力だけでなく、取り組む意識の高さが素晴らしい!
トレーニング視察に行くと、いつの間にかそのチームのファンになってしまいますね!
王子イーグルス氷上練習 DRYトレーニング
●北海道ハイテクAC(恵庭)
ここは、この数年続けてオフ期間に視察させて頂いています。100・200mの福島千里選手で有名ですね。
雪の積もる冬でも100mを全力で走り抜ける事が可能なインドア施設が特徴です。
私の目当ては名伯楽・中村先生。「速く走るには神経だ」と、様々なドリルを駆使した指導は大変勉強になります。神経‐筋機能協調性の向上に有効な手段を学ぶ事が出来ました。
それに、毎年必ず変化がある!さすがだなぁと思いました。あれほどの経験と実績のある中村先生でも試行錯誤を繰り返している…自分の未熟さに気付いただけでも収穫か(TT)
W-UPはバスケ マーカー走
夜は恵み野で一献
●その他、いくつかのトレーニングセミナーを受講したり、シンポジウム等で発表したり、様々なジャンルの方々と酒を酌み交わしたりと、そんなこんなで私の今オフは過ぎていきました。
ゴルフ?もちろん行きましたよ、年末年始を含め3回ほど。スコアは聞かないで下さい(笑)
オフシーズンは、特に他競技のコーチとの交流が面白いと私自身は感じています。
その競技にとってはあたりまえのトレーニングが、野球の世界では新鮮で有効である・・・なんてことは少なくありません。
但し、あちこち行った事で自己満足では仕方ありません。
オフ期間に得た情報を整理し、いかに自チームの選手に段階的に有効活用していくか、そして障害予防とパフォーマンス向上にいかに寄与出来るか、が最も重要です。
2016シーズン、鬼が出るか蛇が出るか…今年も臆することなくチャレンジしていきます!
読売巨人軍トレーニングコーチ 伊藤 博
ご投稿いただいてからコラムにアップするのが遅くなってしまい申し訳ありません(事務局)
プロ野球はタイトなスケジュールです。
2月1日のキャンプインに始まり、オープン戦・ペナントレース・CSに日本シリーズ、そして11月末の秋季キャンプ終了まで、我々コンディショニング部門はほぼ休み無しを覚悟してやっています。もちろん、キャンプ休養日や、シーズン中も週に一度試合のない日に休める時はあります。しかし、たいていは先発投手の調整練習や移動等に費やされます。これは一・二・三軍問わず、どの球団も似たようなものかと思いますが、いかがでしょうか?
では、12月・1月のオフシーズンをどう過ごしているか?
我々トレーニングコーチは1月上旬からの「新人合同自主トレ」で陣頭指揮を執ります。そうなると実質的なオフは12月のみ。しかし、この12月も二軍・三軍担当はアスリハや育成練習を担当する場合も有ります。となると自由に動けるのはほんのわずかの時期。この時期をどう過ごすかは非常に重要だと私は思っています。ゆっくり休んで英気を養い、家族サービスやゴルフ…もちろん、そういう時間も大切です。でもそれだけでは「井の中の蛙」の出来上がり、ですね。普段タイトスケジュールなだけに、フリーに動けるこの時期に情報収集の努力を怠るようではコーチとしての進歩はありません。
今回は、一例として私のオフシーズン(2015年12月)を紹介してみます。
●MLBウィンターミーティング(テネシー州ナッシュビル)
12月上旬はMLBウィンターミーティング期間に開催される「MLB S&C COACHES SOCIETY」に参加しました。これはMLB全球団のストレングスコーチが一堂に会しての勉強会。日本の「プロ野球S&C研究会」との交換交流が始まって3年目です。発表者の楽天・星コーチに加え、オリックス・住田ディレクター、巨人軍からは内藤と私が参加しました。
到着日のレセプションパーティーの後、2日間に渡る会議では各球団から様々な発表があります。STRENGTH、RECOVERY、INJURY etc.・・・。MLBから学ぶべき事柄は少なくないなぁと再認識しました。それを日本のやり方と融合させてどう活かしていくべきか・・・ですね。
参加メンバー 発表中の楽天・星S&C
●アメリカのプロスポーツ視察(テキサス州ダラス)
ウィンターミーティング終了後、ナッシュビルからダラスに移動。
マイケルジョンソン・パフォーマンスセンター、テキサス・レンジャーズ、ダラス・スターズ(NHLアイスホッケー)を視察。それぞれのS&C担当が視察に快く応じて下さいました。
中でもマイケル・ジョンソン・パフォーマンスセンターは、トレーニング棟に加え、野球場2面・ホッケー場
2面、サッカー場16面(!)を有する広大な施設。恐るべしUSA!
マイケル・ジョンソン・パフォーマンスセンター
あのエディ・マーフィーに似た200m・400m陸上五輪金メダリストプロデュースの施設
テキサス・レンジャーズ
ダラス・スターズ
試合会場ではありません、あくまでもチームの練習施設。規模が違う!
●龍谷大学(京都)
龍谷大学長谷川先生は、JATIでご存じの方も多いと思います。スポーツサイエンスというカテゴリーで、現場で役立つメソッドを数多く提案し実践している事から、毎年研究室を訪問し続けて何年になるのやら・・・。
私にとってオフの欠かせない「ルーティンワーク」になっています。長谷川ゼミでの臨時講義も私にとっては良い勉強。同大学青木S&Cコーチの指導も拝見させて頂きました。
京都訪問、となれば夜は祇園・・・ですね。これもルーティン(笑)
龍谷大学 ウェイトルームの熱気は凄かった!
京都、夜のルーティン
●リズムトレーニング(岡山)
12月2日のプロ野球S&C研究会で美作大学の津田先生がリズムトレーニングについて発表しました。これにいち早く食いついたのは多分私でしょう(笑)。詳しい理由は割愛しますが、これは我がチームにとって有益な手段と成り得る、とにかく教わろうと岡山に飛び、スタジオをお借りして津田先生と関元トレーナーから特訓(^^)。翌日はリズムジャンプを取り入れている美作大学内のHIPHOP教室を視察させて頂きました。小学生のまぁ上手いこと!プロ野球選手は果たしてどうなんでしょうね。乞うご期待!
美作大学 HIPHOP教室のリズムジャンプ
●王子イーグルス(苫小牧)
かねてから親交のある王子イーグルス小柳S&Cコーチを訪ね、苫小牧へ。
試合日には何度か伺っていますが、練習日は初めて。ここで小柳コーチが実践している「TWIST METHOD」を学ぶのが今回の主たる目的です。氷上練習後のDRYトレーニング(陸上でのトレーニングをこう呼ぶそうです)を視察し、アイスホッケー選手のフィジカルの高さを再認識しました。氷上の格闘技と呼ばれる所以でしょうか。それに、体力だけでなく、取り組む意識の高さが素晴らしい!
トレーニング視察に行くと、いつの間にかそのチームのファンになってしまいますね!
王子イーグルス氷上練習 DRYトレーニング
●北海道ハイテクAC(恵庭)
ここは、この数年続けてオフ期間に視察させて頂いています。100・200mの福島千里選手で有名ですね。
雪の積もる冬でも100mを全力で走り抜ける事が可能なインドア施設が特徴です。
私の目当ては名伯楽・中村先生。「速く走るには神経だ」と、様々なドリルを駆使した指導は大変勉強になります。神経‐筋機能協調性の向上に有効な手段を学ぶ事が出来ました。
それに、毎年必ず変化がある!さすがだなぁと思いました。あれほどの経験と実績のある中村先生でも試行錯誤を繰り返している…自分の未熟さに気付いただけでも収穫か(TT)
W-UPはバスケ マーカー走
夜は恵み野で一献
●その他、いくつかのトレーニングセミナーを受講したり、シンポジウム等で発表したり、様々なジャンルの方々と酒を酌み交わしたりと、そんなこんなで私の今オフは過ぎていきました。
ゴルフ?もちろん行きましたよ、年末年始を含め3回ほど。スコアは聞かないで下さい(笑)
オフシーズンは、特に他競技のコーチとの交流が面白いと私自身は感じています。
その競技にとってはあたりまえのトレーニングが、野球の世界では新鮮で有効である・・・なんてことは少なくありません。
但し、あちこち行った事で自己満足では仕方ありません。
オフ期間に得た情報を整理し、いかに自チームの選手に段階的に有効活用していくか、そして障害予防とパフォーマンス向上にいかに寄与出来るか、が最も重要です。
2016シーズン、鬼が出るか蛇が出るか…今年も臆することなくチャレンジしていきます!
読売巨人軍トレーニングコーチ 伊藤 博