【スリランカ野球クリニックレポート】 「野球を楽しむこと!」

2014.11.02 Sunday

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    今回は中日ドラゴンズの住田コーチより投稿を頂きました。


    201212月、南アジア初の野球専用グランドがスリランカ、コロンボ近郊に完成した。その名は「ジャパン-スリランカフレンドシップグランド」である。日本のODA(政府開発援助)と寄付により建設された「野球場」で本格的な指導をスリランカ野球協会から要請された。




    以前同国の代表チームを対象にコンディショニングクリニックを行ったことがあり、スリランカ野球のレベルは大まか把握する事ができている。世界ランキング32位、アジアランキング7位(共に当時)の代表チームと共に汗を流した答えは、「基礎を指導できる技術コーチ」の協力が不可欠であった。





    写真は2012年末に行ったコンディショニングクリニックの模様。
     
    20141月、スリランカ代表とそれに準ずる学生、そして指導者達総勢40名近くが「球場」に集結した。メインである技術コーチは読売ジャイアンツの後藤孝志育成コーチにお願いした。
    私がまだ米国のマイナーリーグで働いていた当時、現役を引退した後藤氏が単身コーチ留学していた縁で知り合った。英語を話されなかった同氏が身振り手振りで大リーガーの卵を指導している姿をみて、今回のクリニック開催で真っ先に頭に浮かんだ「心で指導できる」人材であった。
     
    後藤コーチと掲げたクリニックのコンセプトは、「野球を楽しむこと!」
     
    その為には、「怪我をしないこと」怪我をしてプレーできなかったら楽しくない。
    次に「基礎を徹底すること」ミスばっかりでは面白くない。そして「声を出すこと」いいプレーを思いっきり褒めよう!
     
    「さあ、行くでえ〜!」関西弁訛りの英語でウォーミングアップがスタート。動的ストレッチから身体をほぐしていく。体育教育後進国のスリランカ、身体を動かす準備という概念がない選手も多い。見様見真似で上肢下肢を捻り、反らし、伸ばし、曲げる。初めて経験する不慣れな「動き」に照れも手伝い選手達から笑みが絶えない。
    「ニヤマイ、ニヤマイ!(ええで、ええで!)」覚えたてのシンハラ語が自然とでる。
    後藤コーチの指導は実にシンプルだ!
    • 内容提示(何をやるのか)
    • 実演(どうやるのか)
    • 解説(なぜやるのか)


     
    今回のクリニックのコンセプトには「野球を楽しむこと」を伝承でき、自国の人が自国で指導できる環境整備にも力を注いだ。最終日に近隣の小学生を招待し、スリランカ代表選手達による即席野球教室が行われた。少し前までINPUTされてきた選手達が、児童の前で指導された事をOUTPUT。先生役の選手達は最後まで、「ニヤマイ、ニヤマイ!」と褒め続けた。


     
    クリニック終了後に指導者がトレーニングについて次々に「WHY?」を浴びせてきた。「なぜやるのか?」選手達に説明できないと「ただのまねごと」になってしまう。彼等の野球に対する真摯な取り組みと情熱に「スリランカ野球の未来予想図」が浮かび上がった。
     

    中日ドラゴンズ トレーニングコーチ
    住田ワタリ
     
     
     
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