競馬ジョッキーのコンディショニング

2015.05.22 Friday

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     今回は、元阪神タイガースの石原 慎二氏より投稿して頂きました。


    2013年まで21年間、阪神タイガースでアスレチックトレーナーとしてトレーニング、コンディショニングそしてリハビリ等を担当させていただきました。今までの経験を活かし、現在は競馬ジョッキー(以下:ジョッキー)やアマチュア野球のコンディショニング指導等を行っています。
    今回のこのコラムでは(野球とは関係ありませんが)ジョッキーのコンディショニング指導から学んだことをご紹介させていただきます。
     
    はたして騎乗はいかなるものか。実際に競走馬に跨るわけにはいかないので、トレーニング室にある練習用木馬に跨りました。
    私たちが乗馬体験などで馬に跨るのとはかなりわけが違います。下の写真は私が(かっこよく?)木馬に跨った様子です。183cm、76kgの私を背に乗せられた馬もかなりの迷惑だと思います(笑) この姿勢で30秒間木馬を揺らしましたが、それだけで大腿部がパンパンに張ってしまいました(笑)




    こちらが本職の騎乗姿勢です。当たり前ですが流石に堂に入っています。実際のレースではこの写真程低くは構えませんが、騎手の理想としては限りなく「馬と一体」になるように騎乗フォームにこだわります。


      



    ジョッキーの身体的特徴として少し解ってきたことがあります。騎乗姿勢は野球の内野手がよく行う股割り捕球と似た姿勢です。騎手は追い動作の際、背中を丸める人が多く、脊柱の伸展力が低い人が多いように感じます。また、胸椎や胸郭の可動性も決して良いとは言えません。胸椎や胸郭の可動性低下に伴い、肩甲骨の可動性も低下し「鞭を打つ動作」がスムーズに行えていない感をもった騎手も少なくありません。
     





    筑波大の松元剛氏の研究によると、騎手は年数を重ねるごとに大腰筋が発達するとのことです。上の写真の姿勢から股関節と膝関節、そして脊柱の小さな屈伸運動の繰り返しで馬を追い立てます(追い動作)。大腰筋が発達するのも頷けます。私のこれまでの経験では、平地専門の騎手よりも、障害競走に騎乗する騎手の方がこの傾向は強いと思います。
     
    ジョッキー達はアスリートの中でも小柄。おおまかに身長160センチ前後そして体重は52キロ前後です。レースでは各馬の斤量が定められているので、ジョッキー達は現役の間はお腹いっぱい食べる事は許されません。
    普段の体重が50キロ未満の騎手は精力的にウエイトトレーニングを行っている姿をよく目にします。しかし体脂肪率10%未満で毎週のように減量を強いられる騎手は体重増加を避けるためにウエイトトレーニングを避ける傾向にあります。私のクライアントの約半数は常に制限体重ギリギリなため、筋量を増やすことを望んでいません。
     

    現在は27歳から48歳までのジョッキーにコンディショニング指導を行っています。若い騎手は「もっと腕力が欲しい」と言います。しかしベテラン騎手は「腕力は最低限あればいい。もっと足腰の動きをスムーズにして馬を追いたい」と言います。皆は騎乗姿勢や動作に対してのそれぞれの「感覚」を大事にします。それぞれの騎手とよく話し合い、彼らが納得のいくコンディショニング計画を作成する必要があります。 





       
    スムーズな左右への体重移動。ゲートを出たときのバランス感覚の向上。追い動作の姿勢で背筋を伸ばす。追い動作時の股関節機能の改善・・・ 
     
     ベテラン騎手が「馬に合わせながら、馬の最高のパフォーマンスを引き出すのが仕事。この乗り方でいいと思っても結局ダメな事も多い。奥が深い。」と言うように、私もまだまだ試行錯誤を繰り返しています。またこの仕事の報告が出来る機会がございましたら、具体的な取り組み等もご紹介させていただきたいと思います。

    トライアール

    石原 慎二

     
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