MLBウィンターミーティング研修報告

2019.08.30 Friday

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    事務局の多田です。

     

    昨年末、福岡ソフトバンクホークスの鳥井田淳氏がラスベガスで行われたMLBウィンターミーティングに参加されました。

    その報告書が届きましたので以下に掲載いたします。ぜひご一読下さい。

    文中の〇番号は下の写真の順番です。写真データに番号がふれなかったのですが、合わせてご覧ください。

     

    <2018MLBウィンターミーティング研修/フェニックス施設見学>

     

     今回、日本プロ野球S&C研究会代表としてフィットネスアポロ/カイザー社の協賛の元、68(126~12,13日帰国)のスケジュールでラスベガスでのMLBウィンターミーティング研修、アリゾナ州フェニックスでの施設見学に参加させて頂きました。今回の研修に参加する上での個人的な期待としましては、6年ぶりに訪れるアメリカ本土(2003~2012年までモントリオール・エクスポス/ワシントン・ナショナルズでマイナーリーグアスレチックトレーナーとして活動)にて、野球やトレーニング、スポーツ医学に関わる人々の生の声を聞き、6年前との変化を感じ取る機会を得る事でした。結論から言わせて頂くと…アメリカは本当に物事が進むスピードが速く、常に進化しているという事を改めて実感させられた研修となりました。具体的な話をまずはMLBウィンターミーティングから紹介させていただきます。

     私自身、アメリカで10年間マイナーリーグのアスレチックトレーナーとして働いていましたが、ウィンターミーティングに参加するのは今回が初めてでした。S&C研究会を通じて毎年参加されている方々が以前のブログでも触れられていますので、ウィンターミーティングそのものについての紹介は省かせていただきます。私が参加させていただいたのは、MLBのストレングス&コンディショニングコーチが参加し、トレーニングやコンディショニングに関するトピックスを紹介したり、話し合ったりするシンポジウムです。今回の開催場所はラスベガス。人生で3回目の訪問でした。簡単に言うと、カジノとショーの町です。そんな町の中でも一際目立つ、金色に輝くMandalay Bayホテルが会場でした。´ よくこんな町でシンポジウムを。。。。と思うくらいたくさんの誘惑に負けそうになりますが、適度にいろんな誘惑とも付き合いながら3日間のシンポジウムに参加してきました。

    PBSCCS(Professional Baseball Strength & Conditioning Coaches Society)と名づけられたこの団体はMLB30球団とその傘下のマイナーリーグのストレングス&コンディショニングコーチで構成され、1993年に設立されました。設立当事は5名しかメンバーがいなかったとの事です。今回の出席者は約200名との事で、この約25年の間に急激に会員が増えています。その大きな要因として、各球団が各マイナーリーグチームのS&Cコーチをフルタイムで雇用している事が挙げられます。ここでいうフルタイムとはオフシーズンも含め年間で契約している(給料がもらえる)コーチで、保険などの福利厚生も年間で含まれています。パートタイムの契約の場合はキャンプからシーズン中のみ(3~9初めまで)の契約で保険なども付いていない場合がほとんどです。私がマイナーリーグで働いていた2012年までは、ほとんどの球団ではフルタイムで雇用されていたS&Cコーチはメジャーに1ないし2人、マイナーではコーディネーターのみ、もしくはAAAレベルまで、といった状況でした。AAAもしくはAA以下のチームにはパートタイムで雇われているS&Cコーチがほとんどでした。つまり1球団に3~4人ほどしかいなかったフルタイムのS&Cコーチが現在はマイナーリーグ各チームのS&Cコーチを含めると少なくとも8~10(各球団マイナーリーグのチームを6チームほど抱えているので)いることになります。これはこの5~6年間で驚くほどの変化だと感じました。また、全ての球団の状況を確認したわけではありませんが、会場には多くの球団の管理栄養士の方々(多くは女性だと思われます)の姿も見られました。これも近年各球団が改善に力を注いでいる分野だという事を同行していただいたカイザーのダンさんからお聞きしました。

    話をシンポジウムに戻しますと、初日の6日はウェルカムパーティーが開かれ、出席者が立食式でドリンクや軽食を頂きながら交友を深めました。この時に、ワシントン・ナショナルズで私が在籍していた当時はAAS&Cコーチ(パートタイム)をやっていて、AAのトレーナーとS&Cコーチの間柄で一緒に働いていたトニー・ロゴ―スキー(すいません写真は無いです。。。) に出会いました。彼は今、ナショナルズのマイナーリーグのコーディネーターをしているとの事で(もちろんフルタイムで)、時間の経過を感じてしまいました。また、僕がAAAのトレーナーをしていた当時(2011)、相手チーム(ボルチモア・オリオールズ傘下のAAAチーム)S&Cコーチとして働いていた内藤良亮君にも出会いました。現在はオリオールズのメジャーのS&Cコーチとして働いているとの事で、彼の活躍ぶりを聞いてうれしくなりました(これは写真あります) お互いに久しぶり過ぎて、自己紹介をして名前を聞いてから気付くという有様でした。他にも他チームのマイナーで働いていたS&Cコーチがメジャーのコーチになっていたり、ナショナルズにいた時のメジャーのS&Cコーチが違うチームのメジャーのS&Cコーチになっていたりと時の変化を感じながらもとても懐かしい時間を過ごさせていただきました。

    翌日、7日はシンポジウム初日。会場で朝食を頂いて午前9時のPBSCCSプレジデントのBrendon Huttmann(Pittsburgh Pirates Director of Performance Science)の挨拶からシンポジウムが始まりました。今回のシンポジウムに参加して新に発見した事がいくつかあったのですが、このDirector of Performance Scienceという肩書きも初めて見る役職でした。日本語で言うなら、「科学パフォーマンス管理者」とでも言うべきでしょうか? 選手の動きを科学的根拠に基づいて管理、改善していこうという仕事なのでしょう。役職について具体的なお話は聞けませんでしたが、イメージとしては、フォースプレートやスタッツキャスト(ステレオカメラやレーダーを使って選手やボールの動きを瞬時に分析するもの)などを使ってデータを元に選手のパフォーマンス指導をしていくといった感じでしょうか。このような役職も6年前には聞いた事がありませんでした。

    今回のシンポジウムで印象に残ったプレゼンをいくつか紹介させていただきます。まずはシンポジウム最初のプレゼンだった、Mayo ClinicDr. MJ Joynerによる「Using Sports Science In The Real World」。このプレゼンでは様々なスポーツ(特に近代オリンピック種目)と野球を比較してみると、道具やルールの進化、改善が及ぼす技術や競技そのものの発展という点では、野球は道具、ルールの進化の恩恵を受けにくいスポーツであるという紹介から始まりました。例えば、走り高跳びを見てみると、マットの品質の向上によりいわゆる「はさみ飛び」から「背面飛び」が考え出され(ちなみに最初の発案者はカナダ人の女子高校生という説を紹介していました)、それから記録が飛躍的に伸びたという紹介がありました。また、棒高跳びでは棒の素材が竹からグラスファイバーに変わり、こちらも記録が飛躍的に伸びたとの事です。競泳選手の水着やスピードスケートのスラップスケートなども紹介していました。これらの例を野球に照らし合わせると、グラブやバット、ボールの品質の向上の及ぼす捕球技術、投球速度、打球の飛距離(又はミート力)などへの影響は、今日我々が携わる、コンディショニングやトレーニングの進歩に比べるとそれほど大きなものではないのではないかという結論でした。特に、現在は各チームで管理栄養士を抱え、選手の食事をも管理している事もふまえ、道具やルールよりもアスリートとしてどれだけ自分を進化させる環境があるか(トレーニング、食事を含むコンディショニング、リカバリーなど)という事の方が、野球においてはその発展に大きく寄与しているのではないかというお話でした。

    2つ目に印象に残ったプレゼンは、UFC Performance InstitutePerformance部門部長のDr. Duncan Frenchの「Lessons from the Octagon: Reverse Engineering Performance in World-Class MMA」でした。いわゆる総合格闘技団体専属のコンディショニングコーチの方の講演でした。このプレゼンではとにかく内容が細かく、個々の選手のパフォーマンスを最高のものにする為に、トレーニングはもちろん、心理的要素や、目標達成までの具体的な考え方などを構成することまで含まれており、コーチングの要素も多分に含んだ内容でした。具体的な目標設定では、選手の体型(性別、階級別)に合わせ、カウンタージャンプの高さや、ピークパワーを細かく数値設定するといった内容でした。また、年間を通じてトレーニングに対する運動生理学的なストレス反応やリカバリー反応(副交感神経系活動の必要性の向上)を記録して選手のコンディショニングを管理し、エクササイズ毎に動作の最高速度や最高出力、パワーの最大値などの計測、技(打撃系、キック系、掴み合い系)によるパワーや出力の違いなど、細かい項目からのデータに基づくトレーニング方法の算出をするなど、いかに多くの根拠に基づいてトレーニングを行っているかということが分かりました。内容があまりに細かすぎて、このプレゼンの50%も理解できたとは思っていませんが、野球においてもポジションによって動きや運動量が違い、体型やタイプ(パワー系、ミート系など)の違う選手が1チームにたくさんいるわけですから、それぞれの選手のチームでの役割を考えれば、個々にトレーニングの内容が違っていてもおかしくはないなと思いました(すでに実行されている球団もあるかも知れませんが。。。)

    これらのプレゼン以外にも、レッドソックスでコンディショニングコーチをされている日本人の百瀬喜与志氏らは、選手をはじめ、チームに関わる人々に心理学的にいかに安全な環境をコンディショニングコーチとして整える事ができるかという内容を講演され、MLBでも心理的サポートをとても重要視しているという事が分かりました。シンポジウムの最後にはパネルディスカッション方式で、プレジデントのBrendon Huttmann氏とサンフランシスコ・ジャイアンツでアシスタントファームディレクターを務めているGeoff Head氏を中心にMLBにおいてPBSCCSメンバーのリーダーシップがいかに進化しているかという内容でディスカッションが進められ、MLBにおけるこの会の役割やこの会において過去にリーダーシップをとってきた方々の功績、そして現在リーダーシップをとっているBrendonや、所属チームにおいてコンディショニングコーチを担っていたGeoff Head氏が現在アシスタントファームディレクターというチームでも非常に重要な役割を担うまでの経緯とこれからの役割などが紹介、話し合われました。ファームディレクターとは、メジャー球団傘下のマイナーリーグ(ドミニカのチームも入れると1球団に約7~8チーム)をすべての面で統括する役職で、私もマイナーリーグのトレーナー時代は、選手の傷害に関する情報はトレーナー間だけでなく、このファームディレクターに逐一報告していました。以前、あるMLBの球団でファームディレクターを担っていた方が、元々はトレーナーとして球団に雇われた方だという話は聞いた事がありましたが、コンディショニングコーチからもそういった人材(アシスタントですが)が出てきている事にMLBの進化していく形を肌で感じる事ができました。

    以上が今回のMLBウィンターミーティング、PBSCCSシンポジウムの紹介ですが、全体的に感じた事は、会の最中に何度も講演者や司会の方々が口にしていた、「Players First!!」という言葉が象徴しているように、我々は選手の為にチームにいる!! という気持ちが溢れ、そういう気持ちに対して誇りを持っているという事を十分に感じとれる会でした。また、これからこの会をみんなで盛り上げ、今よりもいっそう球界の為にできる事を模索していこうとする気概を感じ取る事ができました。決して大げさな言い方ではないと思いますが、会の発足した経緯や環境、近年の規模拡大の様子、存続意義など、我々NPBS&C研究会と共通する部分がたくさんあるのではないかと感じました。ΝЛ┃

    シンポジウム以外のラスベガスでの話題ですが、ホテルがメインストリートの両側に立ち並び、通りに仮装した人々が溢れるラスベガスブルーバードの景色、ベラジオの噴水ショー、大きなホテルの全てに併設されているカジノ(これはほどほどに。。。) など一通り楽しむ事ができました。食事は、ホテルウィンラスベガスの中にある「MIZUMI(名前の意味はちょっと分かりません。。。) という日本食レストランのお寿司が意外 (?) にもおいしかった事にびっくりしました。

    さて、ラスベガスでの濃密な3日間のあと、1時間ほどのフライトを経てアリゾナ州フェニックスにやってきました。研修4日目の9日は休日でした。パワースポットで有名なセドナへ行くことになり、ダンさんの運転で約2時間のドライブ。セドナは何度か訪れた事のある町ですが、いつ行ってもその風景に見とれてしまいます。本当に不思議な形、色をした岩の数々。時間が止まっているような感覚になります。ゆっくり町を探索してランチを食べて3日間のラスベガスでのシンポジウムからリフレッシュできました。 ただ、この時期にジープでのツアーはちょっと寒かったかも。。。ちなみに元アメリカンフットボーラーのジャイアンツの穴吹君はアメリカ本土初上陸にも関わらずこの日は1人でNFLアリゾナカージナルスの試合を観戦に行きました。無事に試合も観戦でき(スタジアム入場時に少々トラブったようですが。。。)、無事にホテルに帰って来ることもでき、最高の休日を過ごせたようです。

    翌日は朝からEXOS本部でトレーニング指導やコンディショニングに関するレクチャーをEXOS LAのパフォーマンスマネージャーを務めておられる、リー・チャンホー氏から受けました。リーさんは以前ボストン・レッドソックスのアシスタントトレーナーも務められておりトレーニング指導の中にも野球の動きをふまえた指導をしていただき、大変分かりやすくレクチャーして頂きました。まず、メインエントランスから入ってすぐに目に付くのは「NEUTORITION(栄養)」「MINDSET(考え方)」「MOVEMENT(動き)」「RECOVERY(回復)」という4つのEXOSの中心となる方針が壁に掲げられており(個人的にはTRAININGではなく、MOVEMENTなんだ!!と感銘を受けました。。。)、その先にはこれまでのEXOSの歴史が描かれていました。トレーニング指導はカイザーマシンを使って行われ、トリプルトレーナーを使って、片方の足を動かして身体を前後に動かす動作や、長いベルトを身体に巻きつけて捻り動作でのトレーニング指導、AIR300SQUATを使ってのスクワット動作とパワー発揮の基本動作、m3インドアサイクルを使っての負荷を徐々に上げていくヒルクライムプログラムなどを指導していただきました。㉑㉒ スクワットの指導では、臀部の筋群が活性化しやすくなるように股関節内旋を意識させる方法として、負荷を持ち上げる際に両足で地面に置かれたドル紙幣(両足で踏むくらいの大きなドル紙幣を想定)を左右に引きちぎるイメージで行う(セパレートグラウンド)といった指導法を紹介して頂きました。どのエクササイズも動きは複雑なものではありませんでしたが、身体のどの部分を意識すればいいのか、野球の動作にどういう風に繋がっていくのかなどを丁寧に教えて頂き、強い力を発揮する為の細かい身体の使い方やバランスの取り方などをご指導いただきました。その後のレクチャーは、EXOSで指導者教育の為に実際に使用されている教材(パワーポイント)を使って進められました。トレーニングにおける基礎的な知識(3平面やパワーの定義など)から、目的に応じたトレーニングの方法、日々のトレーニングデザインの例など短い時間で内容の濃い講義をして頂きました。EXOSでは選手にトレーニング指導をする上で、曜日ごとに動きの種類(ラテラルムーブやクイックムーブなど)を決めて行い、種目のタイムやパワーの数値を最優先するのでは無く、動き(Movement)を常に評価しながら指導しているというお話が印象的でした。また、怪我から復帰していく選手に対しては、怪我をしている部位に関わらず、必要な動きを生み出す個々の関節のmobilitystabilityを重要視しているとの事でした。トレーニングデザインに関しては、上肢、下肢の種目をPrimary(一番負荷の大きな運動)Secondary(2番目に大きな負荷を使う運動)Accessory(PrimarySecondaryの運動を支える単関節運動)に分け、さらにそれぞれをPull(引く)Push(押す)に分けてデザインしていくという内容でした。例えば、上肢Pushを行う日であればPrimaryはベンチプレス、Secondaryはインクラインワンハンドダンベルプレス、Accessoryはトライセプスプレスダウンを行い、翌日に上肢Pull、もしくは下肢のPushPullを行うという風にその日にどの部位のどんな動きをトレーニングするかを決めてメニューを決めていきます。PrimarySecondaryの種目は必ず先に行い、休日の前日には一番負荷の高い下肢Pushを行うとのことでした。このPrimaryの種目に関しては、筋肥大を目的に行う場合でも1日に行う種目は1つで十分だとの見解も興味深いものでした。また、動きを評価する上でKinetic linking(動的な結合)Energy Leaks(代償動作による動的な結合を生み出そうとする動き)を見極める事が大切になるとのことでした。

    野球におけるランニング種目に関しては、Acceleration(加速)Absolute(絶対的な)スピードに分けて考えなければならず、野球では直線で走る最大の距離は塁間の距離(27m)であり(守備においてもこれ以上の距離を直線で全力で走る事はほぼないのではないかとの見解でした)、その距離においていかに加速スピードを上げていくかということを考えればこの距離以上を走る事は必要ないという見解でした。Absoluteスピードに関しては10mダッシュのタイムをいかに向上させるかを考えれば長い距離を走る事は必要ではないとの見解でした。また、長い時間トレーニングを行うと選手がIntensity(強度)を自分でコントロールすることに繋がる為、ランニングも含めどんなトレーニング種目も20分以上は行わないとの事でした。体脂肪減少の目的で行う有酸素運動も、低い強度でただ長い時間行うのではなくインターバル種目を行うほうが効果は高いとの見解でした。

    EXOS見学時にランチをここで頂きましたが、最初にメニューが書かれた紙を渡され、肉、炭水化物、サラダ、野菜などの種類と調理方法(ドレッシングの種類を含む)を自分で選択したものを頂きました。ここでトレーニングするアスリートに対しては、専属の管理栄養士がこれらの項目を個々のアスリートの目的に対して選択したものを朝食と昼食に提供しているとの事でした。㉔㉕ 施設の中にはもちろんリカバリーの設備もあり、PTやセラピストもいますが、それらの環境はあくまでリハビリの選手がメインに活用するものであり、その他の怪我をしていない選手に対しては交代浴(屋外に温水、冷水プールを設置)やバイクなどの低負荷のエクササイズ以外のリカバリーの手段はほぼ使用しないとのことでした。

    EXOSを見学して感じた事は、トレーニング方法や理論はもちろん、栄養補給、トレーニングに関する考え方などの心構えなど全てにおいて専門性を深く追求し、より質の高いトレーニングをより高い効果を生み出す環境(心理的なサポートも含め)にて提供することが個々のアスリートが目標を達成する為に必要だという事でした。プロフェッショナルという意味を深く考えさせられる体験でした。㉖㉗

    EXOS見学の後、午後からシアトル・マリナーズのキャンプ施設があるピオリア・スポーツコンプレックスを訪れました。ここではウエイトルームを見学させていただきました。ここは以前(10年前)にも訪れたことがあったのですが、その当時よりもウエイトルームが拡張され、屋外でもトレーニングが出来るように改築されていました。マリナーズの施設のすぐ隣にキャンプ施設を構える(キャンプ中の球場を共有している)サンディエゴ・パドレスや同じく今回見学させて頂いた、アナハイム・エンゼルスのキャンプ施設でもこの屋外でトレーニングを行う場所をウエイトルームのすぐ隣に確保しており、メジャーではこのような施設が主流となっているのだと感じました。㉘㉙

    今回はフェニックスにあるMLBのスプリングトレーニングの施設を3球団(シアトル・マリナーズ、アナハイム・エンゼルス、アリゾナ・ダイヤモンドバックス)見学させて頂きましたが、1番施設として充実しているなと感じたのは、ダイヤモンドバックスの施設でした。この中で1番新しい施設だという事もありますが、トレーナー室やウエイトルーム、選手ロッカーやフロントオフィスなど、それぞれの施設を使う現場の人達が使いやすいように設計されていると感じました。選手ロッカーや食堂がメジャーとマイナーで分かれていることはもちろんですが、マイナーのロッカーも、レベル(シングルAからトリプルAまで)ごとに分かれているキャンプ施設は初めて見ました。施設に入った瞬間から、メジャーとマイナーの待遇の違いを意識させられる作りになっていました。

    今回、私達の見学に付き添ってくれた、ダイヤモンドバックスのメジャーS&Cコーチのネイト・ショウは元々、アスレチックトレーナーとしてマイナーリーグのトレーナーから野球の仕事を始め、なんと私がマイナー1年目の2003年のシーズンは、タンパベイ・デビルレイズのショートシーズンA(シングルAの一番下のレベル)のチームのトレーナーを務めており、私と同一リーグの対戦相手のトレーナーとして1シーズン戦った仲でした。6年振りにアメリカ本土を訪れて、またしても時間の経過を感じさせられる瞬間でした。もう1人、ダイヤモンドバックスのメディカルスタッフで私たちの見学に通訳兼として付き添って頂いたのが、ダイヤモンドバックスのメジャーのマニュアルセラピストとして働いている、谷沢順子さんでした。谷沢さんのお父様は名球会入りされている元野球選手の谷沢健一さんで、順子さんもUSAオリンピック陸上代表チームのトレーナーなど素晴らしい経歴の後、昨年(2018年から)ダイヤモンドバックスに入団されています。施設の説明などはもちろん、これまでのアメリカでの経験や入団された経緯など、いろいろなお話を聞かせていただき、大変お世話になりました。アキュスコープやARTPRI、ドライニードルなど、スポーツ治療の最先端の技術を使ってメジャーの選手を支えているその姿に、同じ日本人として非常にうれしく思い、とてもいい刺激を与えてくださいました。ネイト、谷沢さん、施設見学にお付き合い頂き、本当にありがとうございました。㉚㉛㉜㉝

    今回のアリゾナでのメジャー3球団の施設を見て感じたことは、トレーナー室とウエイトルームがどの施設も隣接し(基本的にガラス張りになってお互いが見えるようになっている)、どちらも大変広いスペースを取っており、選手、メディカルスタッフ、トレーニングスタッフみんなが大変使い易い造りになっているなということでした。特にダイヤモンドバックスのようにコンディショニングスタッフもマッサージセラピストの資格を持っており、治療にも積極的に参加するようなシステムになっているチームにとってはこの設計は欠かせないものだなと感じました。

    アリゾナ最後の施設見学は、昨年末から今年の初めにかけてホークスの選手もお世話になった、Fischer Instituteでした。ここは、野球だけでなくアメフト選手などのリハビリ、オフシーズントレーニング施設としてアメリカでも広く知られている施設で、日本人選手で自主トレをここで行っている選手も多くいます。ビジネスオフィスが建ち並ぶ建物の一角に位置するこの施設は、治療とトレーニングのエリアが分かれており、トレーニングエリアはウエイト機材が並ぶエリアとアメフトのフィールドを思わせる長方形の人工芝のエリアに分かれています。治療のエリアにもトリートメントテーブルだけでなく、簡単なエクササイズを行える十分に広い場所が確保されており、アスリートだけでなく、術後のリハビリにここに通う一般の患者さん達もチューブや軽いダンベル、自重でのエクササイズを行っていました。㉟㊱ また、施設の裏側にはブルペンも完備されており、自主トレやリハビリではここでピッチングも行えるようになっているとのことでした。この施設で20年近くPTとして働いている、K-2こと日本人の菅野さんにいろいろとお話を伺う事ができました。㊲㊳この施設には、PT、アスレチックトレーナー、S&Cコーチが連携してアスリートから一般の患者さんまでそれぞれのニーズに合ったサービスを提供しているとの事でした。治療の内容もマッサージやARTなどの手技だけでなく、カッピングやアメリカでも急速に広がりを見せているドライニードル(トリガーポイントや筋肉、結合組織を刺激する鍼を用いた治療)、特殊な器具をもちいたASTYM(写真の器具を用いてグラストンのような手法で行う治療)、下肢を圧迫することで効率よくリカバリーを行えるNorma Tech(ノーマテック)など様々なニーズに応えられるように幅広く行えるようになっているなと感じました。

    以上が今回のMLBウィンターミーティング研修/フェニックス施設見学の報告です。冒頭にも述べましたが、久しぶりのアメリカ本土での研修となり、アメリカの野球の現場の空気を6年振りに肌で感じ、全ての事において新しいものを取り入れる事を恐れず、立ち止まらず、進歩していくスピードに改めて驚かされました。個人的には今回の研修の経験は現在の自分の職務において大変いい刺激になりました。アメリカにいても、日本にいても、常にアンテナを敏感にして、自分の提供するサービスが選手、球団にとってより良いものとなるよう進化、進歩していく事を恐れず前進していきたいと、今回の研修を通してより強く思いました。

    今回の研修をサポートしていただいた、フィットネスアポロの比佐さん、花生さん、カイザーのダンさん、おかげさまで素晴らしい研修になりました。本当にありがとうございました。また、この研修の機会を与えてくださいました、S&C研究会代表の三木さん、S&C研究会事務局の多田さん、平野さん、塚原さん、この場をお借りしましてお礼を述べさせていただきます。今回は素晴らしい経験を本当にありがとうございました。S&C研究会においてこのような研修のチャンスを毎年のように頂けるというのは素晴らしいことだと思います。毎年、応募しようかどうか迷っておられる研究会会員の方(自分もそうでした)、また、アメリカに行く事に全く興味は無いけれど、現在の職務において新しい刺激を求めておられる研究会会員の方がおられましたら、是非とも応募されることをお勧め致します。感じるものは皆さん多種多様だと思いますが、必ず自己にとっても、自分の所属する球団にとっても、自分がサービスを提供する選手にとってもプラスになることは間違いありません。

     

    最後に今回の研修で参加者みんなに一番評判の良かった食事を紹介します。

     

    IN&OUTバーガー。。。。。㊴㊵

     

    アメリカ感満載のバーガーです。アメリカ西海岸でとても有名なファーストフード店です。アメリカ西海岸にお越しの際は是非1度お試し下さい。

     

     

    福岡ソフトバンクホークス

    2軍コンディショニング担当

    鳥井田 淳