MLBウィンターミーティングレポート

2017.03.31 Friday

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    皆様こんにちは

    S&C研究会事務局の多田です。

    前回の投稿より少し時間が空いてしまいましたが、今回は中日ドラゴンズの塚本コーチより寄稿して頂きました。

    私の手違いで塚本コーチが寄稿してから掲載するまでに時間がかかってしまったことをお詫び申し上げます。 

     

     

     

     昨年12月、KAISER社のDanさんはじめ、関係の皆様のご協力のもと、SC研究会を代表しまして塚本がアメリカに行って参りました。

    初の渡米。様々なものを見て、聞いて、感じて…本当に大興奮の毎日で素晴らしい経験をすることができました。

    このレポートで私なりの視点で感じたことを皆様にお伝えできればと思います。そして今年の名古屋のSC研究会運営の参考にできればと思っています。

     

     まずは旅程について。PBSCCSProfessional Baseball Strength & Conditioning Coaches Society)シンポジウムに出席させていただいた後、そしてフロリダ州マイアミにある様々なスポーツ施設の視察させていただくという行程でした。

     

    詳細は以下の通りです。

    122日〜3

    PBSCCSシンポジウム(Gaylord National Resort & Convention Center

    125日 

    BORAS SPORTS TRAINING(代理人スコット・ボラス氏の顧客専門エリートジム)

    MIAMI FC(北米サッカーリーグ)

    THE CHAMBER FITNESS(元NFLチェンバー氏の私営のジム)

    NEUROCITY JUNCTION(チェンバー氏の関連施設 Neurological Therapy Center

    MIAMI HEATNBA

    126

    MIAMI DOLPHINSNFL

     

     続いて、目的です。

    この研修ツアーに参加するにあたり、ただでは帰っては来られないと、私なりに2つの目的を設定しました。

     

    • 多様性について学び、感じる
    • 英語を使ったコミュニケーション

     

     多様性。英語ではDiversity。様々な場面で耳にし、またメディアや活字でも見かけるキーワードです。

    「幅広く性質の異なるものが存在すること」「相違点」という意味。最近ではリオオリンピックでこの多様性を認め合うということを掲げ開催されたことが話題となりました。私自身の組織や仕事の成長にもこの多様性が必要だと感じていたタイミングでした。

    SCの世界でも様々な方法が発達し、十数年前とは比較にならないほどの情報が溢れており、またそれらを基に取り組んだ選手や、S&Cコーチ、トレーナーが入団し、加えて外国人選手を含めるとまさしく様々な側面で「多様化」してきていることを強く感じています。そこで私に必要なことは何か。それは多様なバックグラウンドを持つ人材を受け入れて、それを活かすマネジメント能力が必要であると考えていました。多様な人々が互いの違いを尊重して共に生きる社会であるアメリカMLBの「多様性」を学ぶという視点でこのツアーに臨みました。

     

     そして、せっかくの英語圏。英語での質問をする、伝わらなければ片言で、最後は体当たりで…と、通訳等の助けを極力使わず、異文化に直接触れる事により、自らの気付きや学びのモチベーションが高まるということを期待して臨みました。

     

     前置きが長くなりました、レポートに戻ります。前半をPBSCCSシンポジウム、後半を施設見学ツアーの2つに分けてレポートさせていただきます。

     

    PBSCCSシンポジウム】

     前日にレセプションパーティーが行われました。立食形式で、飲み物を片手に語り合う場です。全体を見渡すと握手とハグがあちらこちらで繰り広げられていました。年に1回各球団からの同業者の会合です。日本のSC研究会の開始時と同じですね。違いは周囲の身体のゴツさと孤立感でした…。幸いDanさんや部下の方、前年に参加している楽天の星さんなどを通じて、幾つかの球団の方と挨拶と談笑をすることができました、中身薄ですが…。勢いを増した私は、思い切って爽やかな2人に話しかけて見ましたが、MLBのコーチではなく、サプリメントの営業の方だったのは笑い話です。協賛企業の方々でしたね。しかしこのことが後々大きなプラスになるとはこの時予想していませんでしたが。

     

     

     いよいよシンポジウムです。2日間に渡りビッシリとスケジュールされています。主な演題をご紹介します。

    • The New Training Table
    • Front Office: The Role of the SCC in Professional Baseball
    • Sport Science Series: Performance, Prevention & the Future of Sport
    • Sport Science Series: Individualized Readiness Assessment
    • Applied Sports Science: Elemental Movement and Energy Expression
    • Applied Sports Science: Screening to Programming
    • High Performance Coaching & Development
    • LTAD Programming in the Dominican Republic
    • MLB Drag Program Report
    • Integrating Nutritional Services into Performance Mode

     

     タイトルから見てご理解いただけると思いますが、スポーツ科学・トレーニング関連がやはり中心で6コマ、栄養が2コマ、ドーピング関連と経営陣側の講演がそれぞれ1コマという構成。また10コマ中、MLB現役指導者の講演は5コマ、異業界からはNFL Washington RedskinsJake氏、NIKE社のKeith氏、FMSGray氏の3コマ、その他はPittsburgh PiratesAssistant GMKyle氏の講演という構成割合でした。その他、合間もしくは最後に定例会議のようなミーティングや、協賛企業のプレゼンテーションなどが加わりました。

     巨人軍のジョンさんに訳していただきながら、またプレゼンテーションの資料を見ながら理解に取り組みました。スポーツ科学関連の講演では、共通して最後にS&Cコーチにはコミュニケーション能力が重要な要素となってきていると結論づけていたことが印象的でした。これらの背景には最新機器を用いて、あらゆるデータを取り、各パフォーマンステストやトレーニンングの履歴、その他では試合時の動きなど、ほとんどの事をシステムで管理することが拡大している点があると思います。必要な内容や項目はシステム内に入れば全て情報を手に入れることができる反面、最終的にはS&Cコーチは直接選手と会話をすることのみならず、担当コーチと話をし、協力して選手へのアプローチを行なっていくこと、つまり機械ではなく、人間同士のコミュニケーションが重要だという発表内容が多く見られました。

     

     

     また、LTAD Programmingを講演されたヒューストン・アストロズのLatin American Strength & Conditioning CoordinatorRachel氏は、女性ながらMLBSC分野で働かれており、またオマハ出身のアメリカ人でありながらドミニカのLTADを担当されているという2つの点から、アメリカの多様性を垣間見ることができました。当然、プレゼンテーションもフロアを動きまわりながらのパワフルな講演だったことが印象的でした。

     関連して、楽天の星さんを通じて、ニューヨーク・ヤンキースのヘッドSCコーチのMatthew氏に話を伺う機会を得ました。こちらはドミニカ出身のマイナーリーガーに対し、日本で言うキャンプ時にその教育をご自身で指導に当たるとのことでした。MLB自体がグローバルに拡大していく中で、現場の指導者の多様性に対する対応が当然とのことでした。田中投手が活躍できている背景にはそういった体制や文化の存在が大きいと思いました。食事をさり気なく共にしていただくなど温かく対応してくれたMatthew氏、感謝です。

     

     

     その他には、たくさんの情報交換ができるスケジュールの取り方が日本のSC研究会と大きく違いがあると感じました。まずは朝食や昼食を同じフロアで取れる点です。ここでも同じテーブルになったSCコーチの方と色々話をすることができ、有意義な時間となりました。次にVendor Timeとして90分を2回スケジュールされていました。隣の部屋に準備された協賛企業ブースで過ごす時間が充分に確保されており、じっくりと見て、聞いて歩き回ることができ、これもまた英語でコミュニケーションを取ると目的を設定した私にとって貴重で楽しい時間となりました。レセプションパーティー、朝食、昼食そしてVendor TimeMLBコーチと関わる多くの時間を確保できることは、協賛企業にとって多くのメリットがあり、出資する価値が高まるのではと強く感じました。

     

    【視察ツアー】

     後半の施設見学ツアーに入ります。合計で5ヶ所のトレーニング施設を見学させていただきました。

    1. BORAS SPORTS TRAINING(代理人スコット・ボラス氏の顧客専門エリートジム)
    2. MIAMI FC(北米サッカーリーグ)
    3. THE CHAMBER FITNESS(元NFLチェンバー氏の私営のジム)
    4. MIAMI HEATNBA
    5. MIAMI DOLPHINSNFL

     

     いくつか共通点がありました。まずはゴリゴリのトレーニング施設ではないという点ですね。BORASTHE CHAMBERDOLPHINSにはフリースペースというのでしょうか、ウエイトトレーニングを実施できるスペースとは別に、セルフコンディショニングやアジリティートレーニング、ジャンプ、メディシンボール用の壁など多目的に活用できるスペースが非常に広く確保されています。トレーニングの多様性に対応する設計となっており、効率的で機能的な施設という印象を受けました。今後の主流となるであろうといった施設設計でした。

     

     

     次に即時フィードバックができる機器の活用です。KAISER社のファンクショナルトレーナーやスクワットはその1つです。その他にも、『パワー』を目に見える形で表示し、即時にコンピューター上に数値が示され、具体的な指標を使ってトレーニングができる器具が多くみられました。

     さらに、大人数を一括管理するシステムも備えられている施設もありました。全選手の体重や尿検査の結果や比較が即時にモニターに表示されるものや、各クライアントのメニューがタブレット+モニターに表示されるシステムです。先のシンポジウムの協賛企業ブースに、同様な関係の展示が多くあったことも含めると、「ICT×スポーツ現場」というテクノロジーを駆使するという潮流を肌で感じることができました。

     最後に、対応していただいたS&Cコーチの方々のお人柄について。本当に素晴らしい「おもてなし」をしていただきました。誠実で情熱的でユーモアがあって論理的で…あげるとキリがありません。選手とのコミュニケーションも素晴らしいものだろうと想像できました。また案内中の他のスタッフとのやり取りを見ても、チーム内での信頼の高さも伺えました。そしてKAISER社のDanさんとなど、メーカーとユーザーの良好な関係も感じ取ることができました。

     

    【運営面】

     シンポジウム、見学ツアーに続きまして、最後にシンポジウムの運営面についてのレポートです。

     ・年1回の特別な会合。妥協のないタイトなスケジュール

     ・協賛企業との時間とスペースを大きく確保

     ・アプリなどのICTの活用

     ・シンポジウムオリジナル、団体オリジナルグッズの活用

     ・トレーナー部門との連携(場所・協賛ブースなど)

    以上が運営面で参考になった点です。予算、環境等に差があるにしても、全参加者にとって有意義になるもの、価値あるものにすることを考えると、大変参考になる運営体制と感じました。これらの経験をもとに実現可能なものを探りながら色々と提案させていただき、SC研究会独自のものを生み出せるよう、協力して開催の準備を進めたいと思います。

     

     レポートは以上となります。41歳で初めての渡米。本当に素晴らしい経験をさせていただきました。シンポジウムと現場見学を通じて、当初の目的であった「多様性」に関する情報に関しましては、満足とは言えませんが様々な事を見て、感じることができました。そしてフィットネス大国のアメリカも「テクノロジーが本物の指導者に成り代われるのか」といったジレンマにあることがわかり、S&C界にもICT分野の革新が凄まじい勢いで進む中で、選手に対して私達しかできないことは何なのかと改めて考えさせられました。同時に新しいトレーニング理論、様々なところからの新入団選手、そして新しく変わる体制といった多様な環境におけるリーダーシップこそが、私達のスポーツ現場により必要であることは間違いないと確信しました。

     

     最後に、このような機会を与えてくれた日本プロ野球S&C研究会の皆様、KAISER社のDan氏、同行して頂いたフィットネスアポロ社の比佐仁さん、央さん、巨人の伊藤さん、ジョンさん、楽天の星さん、そしてその他MLB関係者の皆様に心より感謝申し上げます。本当にありがとうございました。

     

     

    中日ドラゴンズ  塚本 洋